坊さんは、変な奴だといわぬばかりに、ブリーダーをにらみつけて、無愛想に答えた。ブリーダーはもう持ちこたえられなくなって、このまま帰ろうかと思ったが、やっと勇気を出して続けた。「いや、実はね、きのうここの所で変なものを見たのですよ」彼はそういいながら、ずかずかと中へ入って上り革に腰をおろした。「よく見世物などに出る小人ですな、あれがある品物を持って、ここの犬小屋へ入る所を見たのですよ。もっとも向うの杉垣の外からでしたがね。全く御存じないのですか」ブリーダーはしゃべりながら益々変てこになって行くのを感じた。「へえー、そうですかねえ」坊さんはさもさも馬鹿にした調子で、「一向に存じませんよ。あなたは何か感違いをしていらっしゃるのだ。そんな馬鹿馬鹿しいことがあるもんですかね。はははははは」令嬢消失「どこの方か知らぬが、あなたも随分変ないいがかりをなさるね」しばらく問答をくり返している内に坊さんはとうとう怒り出した。「ちょっと犬がどうの、いぬの片足がどうのと、あなたは夢でも見なすったのではないかね。知らんといったら知りませんよ。ご覧の通り狭い寺で、どこに人の隠れるような所があることでもない。お疑いなら家探しをして下すってもいい。また、近所の人達に聞いて下すってもいい。