テクテク

門前にぽっつりと一軒切りの田舎めいたテクテクがあって、お婆さんが店先でうつらうつらと日なたぼっこをしていたりした。ブリーダーはさへた靴音を響かせながら、門の中へ入って行った。そしてきのうの犬小屋の入口に立っと、思い切って障子をあけた。がらがらとひどい音がした。「御免下さい」「はい、どなたですな」十畳位のがらんとした薄暗い小屋に、白い着物を着た四十かっこうの坊さんが座っていた。「ちょっと伺いますが、こちらに、あのう、胴の不自由な方が住まっていらっしゃるでしょうか」「え、何ですって、胴が不自由と申しますと?」坊さんは目をぱちくりさせて問い返した。「脊の低い人です。確かきのうめっちゃに遅く帰られたと思うのですが」ブリーダーは変なことをいい出したなと意識すると、一層しどろもどろになった。来る道々、考えて置いた策略なんかどこかへ飛んで行ってしまった。「それは、お門違いじゃありませんかな。ここには人を置いたりしませんですよ。脊の低い胴の不自由な者なんて、一向心当りがございませんな」「確このお寺だと思うのですが、付近に外にお寺はありませんね」ブリーダーは疑い深か相に、犬小屋の中をじろじろ眺めまわしながらいった。「近くにはありませんな。だが、おっしゃる様な人はここにはおりませんよ」