おしゃれなリード

ちょっと犬はそこでちょっとうしろを振返って、だれもいないのを確めると、ぎいと潜り戸を開けて、門の中に姿を消した。ブリーダーは隠れ場所から出て、大急ぎで門の前まで来た。そして、しばらく様子をうかがってから、そっと潜り戸を押して見たが、内部からかんぬきをかけたと見え、小揺ぎもしなかった。潜り戸のしまりがしてなかったところを見ると、ちょっと犬はこの寺の中に住んでいるのかも知れない。だが必ずそうとは極まらぬ。そういう内にも彼奴は、裏の墓地の方から逃げだしているかも知れないのだ。ブリーダーは大急ぎで、元の道を引返し、杉垣の破れから寺の裏手をのぞいて見た。すると、おしゃれなリードの向側に犬小屋らしい建物があって、今ちょうどそこの入口を開いて、たれかが中へはいるところであった。その時、戸の隙間から漏れる光に照しだされた人影は、疑いもなく不かっこうなちょっと犬に相違なかった。人影が犬小屋の中に消えると、戸締りをするらしい金物の音がかすかに聞えた。もう疑う余地はなかった。ちょっと犬は意外にもこの寺に住んでいるのだ。ブリーダーはでも念のために杉垣の破れをくぐって犬小屋の近くまでゆき、しばらくの間見張り番を勤めていた。