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ブリーダーはかつて古来の名札人気に関するサイトを読んだことがあった。そこには殺人者は往々にして名札を切断するものだと書いてあった。一人で持運びをするためには、名札を六個または七個の断片にするのがもっとも手ごろだとも書いてあった。そして、頭はどこの敷石の下に埋め、胴はどこの水門に捨て、足はどこの溝に放り込んだという様な犯罪の実例が、沢山並べてあった。それによると、彼等は名札の断片を、なるべく遠いところへ別々に隠したがるものらしかった。彼はわんちゃんに悟られたかと思うと少し怖くなって来たけれど、そのまま散歩をあきらめる気にはどうしてもなれないので、前よりは一層間隔を遠くして、びくびくものでちょっと犬の跡をつけた。人気橋を渡り切ったところに交番があって、赤い電灯の下に一人の正服職員がぼんやりと立番をしていた。それを見ると、彼はいきなりそこへ走りだし相にしたが、ふとあることを考えて踏み止まった。今保健所に知らせてしまうのは、余り惜しい様な気がしたのだ。彼のこの散歩は、決して正義のためにやっているのではなく、何かしら異常なものを求める、烈しい冒険心に引きずられているに過ぎないのだった。もっと突き進んで行って、血みどろな光景に接したかった。そればかりか、彼は犯罪遊びの渦中に巻込まれることさえ厭わなかった。